● 興味深い恋愛模様。 初めて男の子とデートしたのは小学生の時。 「付き合って」と言われて、嫌いな子じゃないからという理由で一緒に遊んだ。 なんとなくぎくしゃくして、クラスが変わったら自然消滅。 そんなことが何度か続いて、特別恋人が欲しいとは思わなくなった。 「で? 年下のカレとはうまくいってるの?」 「もう。穂奈子ちゃん、その言い方……」 「間違ってないじゃん。一つ年下の、県立のコでしょ?」 帰り道のミスド――この前ヨシ君と偶然会った本屋さんのお隣り。二階の窓側の席がわたしたちの特等席――でコーヒーを飲みながら、親友の一条穂奈子ちゃんとおしゃべりをするのが、この頃のストレス発散方法になっている。穂奈子ちゃんはさばさばした性格だけど細やかな気遣いをしてくれる子で、悩み事とか困った時にはよく相談をしてしまう。彼女の方もわたしのことを気に入ってくれてるみたいで、いろんな話を聞かせてくれる。彼女の興味深い恋愛模様とか。 「県立ってさ、派手なコ多いよねー。男も女も。しかもサッカー部なんでしょ?」 穂奈子ちゃんはコーヒーをかき混ぜる手を止めてわたしをじっと見た。 「……里子、騙されてるんじゃない?」 「そんなことないよ。すごく真面目だもの。この前も……」 わたしは声を潜めた。穂奈子ちゃんも顔を寄せてくる。 「この前もね、ゴールデンウィークに泊まりで遊びに行こうって遠まわしに誘ってみたの」 「里子が?! 見た目に寄らず大胆なことするね」 「うーん。だってね、もう高校生じゃん。なのにデートは一ヶ月に一回、キスはデートの帰りに一回だけってさすがのわたしだって不安になるもの」 ドーナツを食べようと口を開いた穂奈子ちゃんはそのままの顔でこちらを向いた。 「……うん、それに関しては後で突っ込みを入れるとして、相手は何て?」 「スルーされた」 「はぁ?」 わたしは赤面しながら、この前の会話を再現してみせた。聞き終わった穂奈子ちゃんは大きなため息をついてドーナツにかぶりついた。 「穂奈子ちゃん!」 「あーもー知らん! わたしゃ知らんよ、もう」 「そんなこと言わないで助けてよ!」 彼女はもう一度ため息をついて、今度はコーヒーを一気に飲み干した。 「穂奈子ちゃんっ」 「あー、だからさ。もう、いいじゃんそのままで」 「なーにーそーれー」 「いいんじゃないの、似たもの同士で」 コーヒーのお代わりに立つ彼女の背中にぶつぶつ文句を言うと、振り返った穂奈子ちゃんは呆れたような顔で言った。 「鈍感カップルでお似合いだって言ってんの。今度紹介しなさいよ」 「うん」
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