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Need less God
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雪が降りしきるこの街に、聖夜の訪れはない。
雪が降る静寂の中に、細く讃美歌が流れていた。
雪が静かな歌と声を合わせる。それはさながら天上の歌。
ドンッ
銃が火を噴く音がして、雪は一瞬歌声を止めた。
銃が降り積もる雪にくぼみをつけた。
銃が自身の重みに耐えきれず転がる。それを拾い上げる手。
「罪を犯したものは罰せられるのだ」
男は独白する。
男は気づいている。
男は歌い手を見た。そこには美しい花が一輪。
「たとえ私たちが間違っているのだとしても、
たとえあなたがたが正義だろうとも、
律が決められればそれに従うのが世に生きるためのすべ」
男は神の像を仰いだ。
男は小さく十字を切った。
男は思考を振り切ろうと首を振る。
ドンッ
男は振り返る。
男は目を見開く。
男は口を開く。白い息が漏れる。
「ア……」
銃を持ち未だ立ち尽くす青年の上に雪が降る。
煙を上げる銃の上に雪が降る。
驚きに見開かれた青年と、その足元の死体のまつげに雪が降り積もる。
「……罪を犯したものは罰せられるのだ」
雪は沈黙を守る。
男も沈黙を守る。
青年は重みに耐えかねて銃を取り落とす。体が寒さに震える。
「たとえそれが肉親であっても、
罪は命でまかなわれるべきなのだ………………!」
雪はまた歌い出す。
雪は風に舞う。
雪は嗤う。高らかに。
雪が降りしきるこの街に、聖夜の訪れはない。
雪が降る静寂の中に、細く哀哭の声が響く。
雪が静かな讃美に謳う。
ここは『神』を許さぬ街。
END.
2006.12.18
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