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after・tea・party
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夜にはおもちゃが騒ぎ出す。
月を浮かべたティー・パーティー。
闇色テーブル、ディナー・パーティー。
今宵は私もお客さま。
「ミーナ(お客さん)、いらっしゃい」
「今晩は、マリオネット・ミーナ。あら、貴方は初めまして?」
硝子のドームに閉じ込められた、ほんの少しの人間達は、哀しく激しく人形を、人を模し、心を宿したヒトガタを愛する。
私たちはそんな人間に棄てられたアンドロイド。
「ミーナ。今晩は」
「今晩は、プリュード」
淑やかに礼をすると、プリュードは透き通ったカクテルを干す。
「良い夜だね。潮の香りもしない。螺旋も軋まないだろう」
「ええ。とても良い夜ですわ」
皮に包まれた螺旋を動かし、私は空を見上げた。ドームの中には空は無い。人はもう、空も雲も惑星も、何もかもなくしてしまったのだ。けれど彼らに棄てられた私たちは、こうやって天体を眺めている。
「綺麗な世界だわ……」
「そうかい?」
「ええ。とても」
「それは良かった」
何も無い世界。遠い場所にはまだ残っているものがあるけれど、こうしているだけなら何も見えない。硝子のドームも、かつての持ち主も、人工の伽羅の香りも。
あるのはおもちゃと闇のカーテン。
「踊ろうよミーナ!」
「踊り明かそう、我らの夜更けまで!」
陽気な音楽が奏でられ、カボチャをかぶったお化けが笑い、道化は淋しげな顔を作る。
プリュードはゆっくりと立ち上がって私の手を取った。
「最後の夜を最高の夜にしようか――408マル-ハナ」
「……はい、オーサ・プリュード」
空には月が煌いて、ダンスの踊り手、プリュードと私。
最高の夜におもちゃたちは爆破され、
プリュードが何を想って私たちを作ったのかはワカラナイ。
END.
・アンドロイド……人の形をしたロボット。
・オーサ……作家。この場合「創造主」という意味も含む。
2004.10.27
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novels
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